2018.10.31 OFFICE

『共感』と『購入』は別物/ GB立ち上げからの教訓その1

共感≠購入

私は学生の時には経営学や会計学を専攻し、仕事柄多くの経営者と踏み込んだ話をする機会に恵まれてきました。
本もたくさん読んだ方だと思います。知識だけは一丁前でした。

そんな頭でっかちの私が実際にビル1棟のシェアオフィスという事業を初めて自分で立ち上げた結果、上手くいったことや遠回りしてしまったことがたくさんあります。
そのような事を、これから新しいことを始めるために何かと準備をしているあなたに伝えたいと思い、この記事を書いています。

私の経験によるものなので、当然全ての事業パターンにあてはまるわけではありません。
でも、一つのリアルな事例として共有することで何か一つでも感じてもらうことがあれば幸いです。

今回のキーワードは「ブランディング」や「コンセプト作り」。

今や当たり前になりつつある「ブランディング」

ブランディング。
とても魅力的な言葉です。

ブランディングとは、顧客に「商品・サービスもしくは企業自体に特定のイメージを持ってもらう」ための活動で、「〇〇らしさ」を際立たせることが大切です。
成功すると顧客は何度も商品を購入してくれるだけでなく、どんどん口コミを広げ新規顧客を連れてきてくれます。

こだわりや思いを伝え、顧客を巻き込んで共に作り上げていく。
そんな活動が1人の顧客からの利益を最大化し、新規顧客の獲得コストを最小化するのです。
しかもブランディング活動をしていると自社や商品の事が好きになります。
こんなにメリットのあるものはありません。

『GROVING BASE』というブランド作り

ブランディングに関して知識(だけ)がある私はGROVING BASEの企画段階で意気揚々とブランディング戦略を立て始めました。
まずはブランドイメージを作ることから始まります。
コンセプト作りと言ってもいいかもしれません。

GROVING BASEのメインターゲットは、仕事が忙しくてゆとりのない男性。
そういう人たちがGROVING BASEを利用することで、仕事面では新しいことがどんどん始まり、一方で家族や趣味に向き合う時間を増やすことが出来れば、という思いで作り上げた場所です。
ワークを犠牲にせずライフを充実させ、お互いに良い影響を与えあう好循環を生み出したい。要するにワークライフバランスの実現。
それは、もともと私が「仕事」に対するイメージがとてもネガティブなものだったので、私自身が活き活きと働ける環境を作りたいと思ったのが発端でした。

まずは私にとって「活き活きと働く」とはどういうことかをじっくり考え、要素を吐き出していきました。

「仕事」:新しいことに挑戦し続け、仕事自体を楽しむ。
「家族」:家族を大切にする。家族が仕事を理解し応援してくれる。
「趣味」:趣味を通じて仕事、生活の両面が充実する。

これらを一言でどう伝えるかが難しい。
「ワークライフバランス」という大きなテーマを題材にすると、どうしても伝えたいことが散らかってしまいました。
「ワークライフバランスを実現するオフィスです!仕事が楽しくなって、家族との時間や趣味の時間も作れて・・・」といった調子で実際に色々な方に相談してもあまり響きませんでした。

このままでは共感してもらえないと感じたので、思い切って「忙しく働く『もう少し家族との時間を大切にしたい男性』」にターゲットを絞り、「家族がつながるシェアオフィス」というコンセプトを打ち出すことにしました。

そして、そのコンセプトを際だたせるために「家族」以外のワードを極力排除し、私が仕事で辛い時に妻に支えられたストーリーや、妻に恩返しが出来ていないモヤモヤなどの「家族」に関わる事を強く前面に打ち出してSNSを中心としたオープン前のプロモーションを行いました。

結果は「多くの共感者」と「わずかな購入者」

プロモーション活動の結果、話題性のあるシェアオフィスとしてオープンすることが出来たように思います。
たくさんの方に足を運んでいただき、嬉しい言葉もたくさんいただきました。
そういう意味では私のブランドイメージ作りは大成功です。

しかし、部屋を借りてくれる人はいませんでした。
テレビの取材が来て全国放送になりましたが、放送直後の反響はゼロでした。

「共感」と「購入」は別物です。
この2つを上手く繋げられないと話題性はあるのに売れない、という事になります。
そして順序でいうと「共感者を増やして購入してもらう」のではなく、「購入者を増やし買った人に共感してもらう」べきです。

私は、購入してもらう事よりも先に共感者を集める活動を中心に行ってしまいました。共感してくれた人が入居してくれると信じて。

しかし、その結果としてもともと設定していたターゲットに届かないブランドメッセージを発信してしまっていたのです。

マーケティング戦略とブランドメッセージのズレ

私はブランディング戦略より先に、マーケティング戦略や事業計画を作成しました。ターゲットもそこで決定しています。
ターゲットである「フルタイムで働く起業家やビジネスマン」に合わせたオフィス機能・価格を設定し、それと同時に事業計画を作成して予算をすり合わせていきました。
その後、上に乗せるような形でブランディング戦略を作ったため、コンセプトが浮いてしまったようです。(本来ブランディングはマーケティングの一貫です)

ブランドメッセージは、こちらの意図としては「仕事が忙しいフルタイムワーカーでも家族や趣味の時間を持てる場所」として発信していましたが、そのメッセージはフルタイムワーカーには届かず、子育て中の女性など「働きたいけど制約があって仕事が出来ない人」によく響きました。

その方たちは期待いっぱいで内覧してくれたのですが、フルタイムワーカー向けに設定した価格設定やスペックに合わず、お力になることが出来ずに悔しい思いをしました。
逆にフルタイムワーカーには、「家族連れで働く場所ですよね?」と、「家族」のイメージを強く与えてしまい、他のオフィスよりも働きにくそうな場所と認識させてしまいました。
機能や価格はフルタイムワーカーに向いているのに対し、メッセージは他の人に向いていたのです。

駄菓子屋で1粒500円の高級チョコレートが売られている感じでしょうか。
小学生に高級チョコをオススメしても売れない(でも小学生の間で話題にはなるかも)し、高級チョコが欲しい人でも駄菓子屋で買うのはちょっと・・・というイメージに近いかもしれません。

頭でっかちの私はブランド作りにこだわりすぎて、「世間からどう見られるか?」に重きを置き、購入を検討している「お客様」を見ずにお客様を無視したメッセージを発信してしまっていました。

本気でユーザー目線にたつ事の大切さと難しさ

オープン当初も今も、GROVING BASEでは仕事を楽しく活き活き出来るような環境づくりを心がけています。
オープンから約8ヶ月経ちましたが、提供しているサービスは何も変えていません。

初期は利用者がなかなか増えなかったのですが、伝え方と伝える場所を変えるだけで利用者はぐっと増え、すっかり軌道に乗ってきました。
ユーザーが求めるものは何か?どんな情報がほしいのか?を徹底的に考え、実際に自身で体感するという事を繰り返した結果でした。

もともと自分はユーザー目線に立てていると思っていたのですが、独りよがりのサービスになってしまっていたように思います。

『木が全面に出たおしゃれな雰囲気、打ち合わせなどのしやすい多様なスペース、機能や立地の良さに対する価格の安さ。』
こういったものがGROVING BASEを選ぶ理由です。

それに対して、
『子供を連れてくることが出来る、会計の知識に長けたオーナーにいつでも質問できる、コーヒーが無料で飲める、色々な人に出会える、オーナーの思いが熱い(笑)。』
こういったものはあくまでおまけです。この部分だけをアピールされても、リアルにオフィスを探している人にとってはいまいちピンと来ません。

GROVING BASEは最初、どちらかというとおまけの方をストーリーにして伝えてしまっていました。
購入者はブランドストーリーに共感して購入を決めたわけではありません。
もちろん共感もしてくれているのですが、そこが決定的なわけではないのです。

顧客が購入するものは、「ストーリー」でも「満足感」でも「幸福な未来」でもなく『商品』、つまりオフィスの機能と環境でした。

ブランディングは分類的にはマーケティングの仲間です。
ブランディング戦略はマーケティング戦略と明らかな親和性をもたせてたてないといけません。

それが出来ていないと、期待させた人をがっかりさせることになったり、話題性だけで全く売れないという事になります。
さらに、後からブランドイメージを修正するのはとても大変なことです。
最初からブランドイメージを固めておくことは良いですが、それを外に発信していくブランディング活動を本格化させるのは事業が軌道に乗ってからでも決して遅くはないと私は思います。

GROVING BASEのこれからのブランディング戦略

今は具体的な戦略は持たず、ブランドイメージに繋がる一つの軸を大切に地道に事業活動を続けていこうと思っています。

「働く」を楽しもう。

よくある言葉で、メッセージ性が弱くてターゲットが不明確かもしれません。
でも、言葉より行動、そして理屈よりも思いを胸にコツコツと築き上げていくものが本当のブランドだと今は思います。

教訓

・「共感」と「購入」は別物。共感者を集めるだけではなかなか売れない。
・自分がユーザーならどう思うか?を何度もシュミレーションすること。
・軌道にのるまでは本格的なブランディング活動を控えるのも一つ。

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