家庭と職場のちょうど良い距離感の場所を作りたい

レンタルオフィスオーナー篠田拓也

ーーまずはじめに、篠田さんはなぜGROVING BASEを作ろうと思われたのでしょうか?

 

私がサラリーマンだった頃、家庭と職場が交わる事はありませんでした。妻は私が外でどんな仕事をしているかほとんど知らないし、私も妻が家事子育てについてどんな大変な思いをしているのか知ることは出来ません。

独立後は自宅で働くようになり、逆に家庭と職場の距離がゼロになりました。私は家のことがよく見えて、妻も私が何をしているのかしっかり把握できる環境でした。しかし、仕事と家庭が近すぎると仕事の効率はとても下がり、家族に当たってしまうこともありました。距離が近すぎてもダメなんです。

そこで、家庭と職場の距離が丁度良い場所を作れないかと考えました。普段は質の高いオフィスとして機能していながら、時間帯やフロアによって家族を呼ぶことが出来るオフィスが良いと思いました。家族が入れるフロアやカフェがあるため、仕事の合間に奥さんの代わりに子供の面倒を少しだけ見たり、休日にはオフィスで開催される親子イベントに参加したり、家族がふらりと遊びに来られるオフィスです。

家庭側にいる人が働く人や場所に関心をもち、働く人も家庭に関心を持ち、働く場所が家族を歓迎する。家庭と職場が互いに距離を縮めようとするための施設づくり環境づくりを行い、家庭と職場のちょうど良い距離感の場所を作りたい、そう思ってこのGROVING BASEを作ろうとしました。

 

ーー篠田さんは元々税理士として働かれた後、一般企業へ就職、そしてコンサルタントとして独立……と多彩な経歴をお持ちですが、なぜこのように職を転々とされたのでしょうか?

 

税理士の家系に生まれたから自分は税理士になるんだと、大学を卒業してから父の税理士事務所に就職をしました。その時、就職について、自分の人生について、何の疑問もありませんでした。税理士事務所での仕事は順調で、その上7年付き合った彼女と25歳で結婚。翌年には子供も授かるという、まさに順風満帆の人生を送っていました。

子供が生まれて初めて気づいたことがあったんです。生まれたての我が子を目の前にして「こいつは無限大の可能性を持っていて、努力次第で何でも目指せるんだなぁ」と。その時自分がこれまでの人生、何も考えずにここまできたことにまざまざと気付かされました。絶望に似たような感覚があったんです。自分のやることが全て価値がないように感じ、働くことが辛くなって出勤前に玄関で動けなくなる日々が続きました。

 

ーーお子さんが生まれて順風満帆かと思いきや。

 

はい。それまで重要なことは自分で何も決めていなかったので、そこからは自分で考えて物事を決めて、行動するようになりました。

 

ーーそこから一般企業へ就職を。

 

昔からものづくりが好きで、メーカーに絞って転職活動をしました。就職できたメーカーは中国での生産がメインの会社で『自分で何かを作っている』という感覚は皆無で。そこにも自分がやりたい!と思えるような仕事はなく苦悩の日々を過ごしました。

 

ーーコンサルタントへ独立をするきっかけは何かあったのでしょうか?

 

GROVING BASEのリノベーションに携わってくれたSTUDIO MONAKAの岡山君が古くからの友人で、彼に相談をしたんです。そうしたら「コンサルのスキルは絶対に使ったほうがいい」と言われて。彼の建築事務所にもコンサルとしてアドバイスをしたりして、コンサルタントとしてのキャリアをスタートさせました。コンサルタントとして働き初めて、気づいたことは自分が『ものづくりをしたい』という根っこにある自分の気持ちでした。知識を売るというよりも、実体のあるものを生み出す仕事がしたい、と。

 

ーー知識を売ることができるのは、篠田さんが積み上げてきたものがあるから、だと思います。それを辞めてでも『ものづくり』へこだわったんですね。

 

自分がコンサルをやって、違和感はずっとありました。自分には向いてないのかもしれないと何度も思いました。そんな時、とある研修で「究極のコンサルタントは何も教えない」という話を聞いたんです。たとえば自分の職場に本田宗一郎とかがいたら、みんなめちゃめちゃやる気になってがんばって、すごいパフォーマンスを発揮すると。そういう存在が究極のコンサルタントなんじゃないの、みたいな研修があって。自分にそういう形でできる方法ないかなって思ったんです。「篠田も頑張ってるし、俺も頑張ろ!」となれるような環境づくりができないかなと。

 

ーー篠田さんなりのコンサルティングなわけですね。

 

はい。そんなことを考えているタイミングでこのビルの話が舞い込んできて「これだ!」と思って。

 

ーーなるほど。自分で作る、ということにも繋がりますね。

 

コンサルタントとして培ってきた知識や情報、人脈をしっかりと関わる人に還元できる施設としてシェアオフィスを企画しました。ここであれば入居者の方との対話を通じてより多くの人を応援したり支援することも出来ます。

 

自分の仕事の理念には家族の存在も欠かせません。家族をはじめとした様々な方が気軽にオフィスに来れる開かれたコミュニティを作るためにカフェを構想しました。思い切って私と妻が厨房に入り、家族でカフェの運営に挑戦することにしたんです。喫茶店のマスターのような、いろんな人が気軽にコミットできる存在になりたいと思っていまして。

 

ーー喫茶店のマスター、ですか?

 

ドラマとかマンガに出てくる喫茶店のマスターです。あんまり喋らないけど、いろんな物事をわかっていて、絶妙なタイミングで一言ヒントくれる。答えは教えてくれないけど。そういう、ドラマとかに出て来る主人公に気づきを与えて、解決に導いてくれるきっかけを与えてくれて、平等にいろんな人の話が聞けて、それに対して相手のことを肯定しながら正しい方向に導いてあげられるような、そんなコンサル像を今は描いています。

レンタルオフィス屋上

ーーいろいろと話が繋がってきた気がします。篠田さんの多彩な職歴も、今回のGROVING BASEを作ったことも、オフィスの機能だけでなく、そこにカフェを組み込んだことも、すべて地続きのことなのだなということがわかりました。では今、GROVING BASEはどんな場所として機能することを目指していますか?

 

シェアオフィスのビジョンは「仕事と家庭を両立する働き方の実現」です。ここに行き着いたのは転職、独立を経て、私自身の家族を大切にしたいという思いが募ったことがきっかけです。

 

私は中小企業と大企業でのサラリーマン、自宅で起業、週3で主夫をしながら働くなど様々な働き方を経験しました。その中で家族の存在のありがたみや家族の大切さを再認識しました。その時に仕事と家庭を両立するための課題に気がつきます。

 

ーーそれはどんな課題でしょうか?

 

ひとつは『家庭と職場は遠すぎても近すぎても上手くいきにくい』ということ。サラリーマン時代は家族と交わることができずにストレスを感じ、独立後は家族との距離が近すぎでストレスを感じていました。

 

そこで、家庭と職場の距離が丁度良い場所を作れないかと考えたんです。普段は質の高いオフィスとして機能していながら、時間帯やフロアによって家族を呼ぶことが出来るオフィスが良いと思いました。家族が入れるフロアやカフェがあるため、仕事の合間に奥さんの代わりに子供の面倒を少しだけ見たり、休日にはオフィスで開催される親子イベントに参加したり、家族がふらりと遊びに来られるオフィスです。家庭側にいる人が働く人や場所に関心をもち、働く人も家庭に関心を持ち、働く場所が家族を歓迎する。家庭と職場が互いに距離を縮めようとするための施設づくり環境づくりを行い、家庭と職場のちょうど良い距離感の場所を目指したいと思っています。

 

ーー他にはどんな課題に気がつきましたか?

 

『仕事が子供に我慢をさせてしまう』という課題もあります。「仕事」について考える時には、どうしても家庭、特に子供が置き去りにされがちです。共働きをするとどうしても子供を親から離す時間を作らなければなりません。

 

またどちらかの親だけが働く場合であっても、子供からすると「仕事」は自分から親との楽しい時間を奪う悪者です。でも本当は子供だって働く人に憧れています。幼稚園児にもなりたい職業があったり、お父さんやお母さんのお仕事の手伝いをしようとしてくれたり。親が働くことで子供に寂しい思いをさせず、むしろ働く親に憧れ仕事を辛いものではなくて楽しいものと捉える子供が増える環境を作りたいんです。

 

コミュニティ全体で子供を見て、働きながら子育てが出来るような場所。子供が色々な職業の活き活きと働く大人たちと触れ合って自分の人生を夢いっぱいに生きられるきっかけとなる場所。働く人が活き活きしているから、家族も幸せになる。そんな場所をこのオフィスを通して作り出したいと思っています。

 

ーー保育所や託児所とは違う、新しいコミュニティ作りになるわけですよね。

 

実際に保育所、託児所だと、親とは離れちゃうので。そうじゃなくて、子供が「あそこにお母さん、お父さんいるわ」っていうのを認識しながら遊ぶのって、ちょっと安心感があるんじゃないかなと思うんです。

 

ーー子供はもちろんですけど、親もすごく大きな安心感を得られますよね。

 

親もちょっと休憩時間に、一時間に十分でも遊んであげられたりすると、子供としても「お母さんと一緒にいれてるわ」みたいな思いも持てるのかなと。「昔はずっとお母さん仕事に出てて、ずっと保育所にいたわ」って記憶じゃなくて、働きながらそばで遊んでたなっていう記憶として残ったらいいなって感じですかね。

児童館や保育所、託児所とも違う新しいコミュニティを

GROVING BASEのコワーキングスペース

ーー他には家族を大切にしたい人がこのビルを使うとどんなメリットがありますか?

 

まずは入居者されるの方々の『家族同士のつながり』を強くできると思っています。例えば平日であっても、家族呼んで昼に一緒にごはん食べると、オフィスの人たちにも「これうちの子供たちなんです」とかいう紹介ができる。職場で家族同士のコミュニケーションが簡単にできるということは、職場以外の場所でも活きてくるはずです。何かがあった時に助け合える仲間を作るというか、そういったメリットはあります。

 

ーー家族同士が面識がある状態ってすごく重要ですね。最近だと近所付き合いも希薄な場合も多いですし。

 

そうですね。あとは家族が全員がお互い普段何やってるかっていうのを理解しやすくなります。旦那さんの仕事、奥さんの仕事、距離が離れていると共有も難しくなってくるので、そういったものを近くで見れる状態にして相互理解を深められる環境を作りたいと思っていて。お互いを理解することで、みんながみんなを応援できるようになると思うんです。奥さんが「頑張れよ」って旦那さんのことをしっかりとサポートして、一緒に戦える状態になるというか。

 

ーー家族の絆が自然と深まる、という感じですかね。ありがとうございます。それでは最後にGROVING BASEに訪れるであろう子供たちに、このビルと関わりを持つことでどう成長してほしいか、ビジョンがあれば教えてください。

 

いろんな考え方とか価値観を知って、自分なりの生き方を見つけられる人になってほしいと思います。例えば僕は小さい頃から「税理士になれよ」「士業になれよ」と言われたんですけど、別に税理士になりたかったらなってもいいし、そうじゃなくってパイロットになりたかったらパイロット目指してもいいし。自分で自分の道を切り開けるような子供になってほしいなと思ってます。

 

いろんな家族が集まって、多種多様な価値観をこのビルを通してたくんさん吸収できるんじゃないかなと思っています。

 

ーー児童館や保育所、託児所と違うのは保育士さんや保母さん以外の大人がたくさんいることですよね。ここでいろんな大人と触れ合えることが、子供には良い影響をもたらすのではないかと期待しています。

 

僕もここに来た子たちが、ちょっと面白い子たちになったらいいなと思っています。

レンタルオフィスオーナー家族

KITCHEN担当・篠田ゆみこの想い

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