GROVING BASEに関わる人を紹介する、連載企画「気になるおとなりさん」。GROVING BASEを拠点とする人、サテライトオフィスにしている人、イベントの開催場所として利用する人、ふらりとコワーキングスペースやカフェに立ち寄る人……。GROVING BASEを活用し、様々なスタイルで活躍する人たちを紹介します。
第7弾に登場いただくのは、株式会社bona代表・となり主宰の奥祐斉(おくゆうさい)さんです。
GROVING BASEの公式アンバサダーとしても活躍いただいている奥さんは、バックパッカーとして100以上の国々を訪問。現在は「アフリカから、日本を元気に」という夢を掲げて、様々な活動を展開されています。
その想いや、これからの目標について話を伺いました。
恩を送ると、いつのまにか自分のところにも恩がたまっていく
ー普段は、どんな活動をされているんですか?
もともと僕は、観光や旅行、料理に関係する仕事をしていました。ただ、そのどれもがコロナで大打撃を受けてしまって……。そこから、オンラインイベントに切り替えて、企画をしていくようになりました。
最初は飲み会が中心だったのですが、それがすごく好評で。落語家さんと一緒に飲もうとか、外国人と一緒にディスカッションしてみようとか、色々な企画ができました。去年の3月から数えると、300回以上は開催していると思います。最近ではYouTuberならぬ、”Zoomer”と呼ばれていますね(笑)
オンラインイベントは、収益には結びつきにくいですが、そこを居場所にしてくださっている方がいるんですよ。例えば、一人暮らしをされている年配の方が、オンラインでの食事会を楽しみにしてくださっていたり。友達に恵まれなかった若い子が、初めて仲間と呼べるような方々と出会えたと喜んでくれたり。そういったひとつひとつの声が、大きなモチベーションになっていますね。
今では、人にフォーカスした『オンラインコミュニティとなり』に発展して、月に10本以上のイベントやライブ配信を開催しています。
ー印象に残っている、オンラインイベントはありますか?
「アフリカに村をつくりたい」という方と一緒に登壇したイベントは、特に印象に残っています。参加費は無料で、寄付金をギフトエコノミー(投げ銭)というかたちで募りました。参加費制にしてしまうと、学生の皆さんが参加するハードルが高くなってしまいますからね。
ものすごく魂と熱量を込めて行った結果、150名近くの申し込みがあり、なんと一晩で82万円もの寄付金が集まったんです!まさにギフトエコノミーの極みだと感じましたし、参加者の皆さんには本当に感謝しかありません。ただ、それ以上に寄付をしているので、結果的には大赤字なんですけれどね(笑)
ーイベントが成功した理由は、なんだと思いますか?
自分で言うのもおこがましいのですが、僕は「ギブアンドギブ」の精神なんです。今持っているスキルや人のつながりは、たまたま自分の手元にあるだけで、決して自分だけのものだけではありません。相手が喜んでくれることを最優先に考えて、とにかく与えていく。「与える」という感覚もありませんね。自分を癒すかのようにやっています。
これは、僕がアフリカに行ったときに、現地の方から学んだことでもあります。正直、僕よりも貧しいだろうなと思っていた方々が、僕以上に色々なものを与えてくれるんですよ。すごく幸せに感じましたし、これが本当の豊かさなんだろうなと思いました。
今回のイベントの成果も、これまで継続して開催してきたことの積み重ねがあったからだと思います。恩を送っていくことを繰り返していくと、いつのまにか自分のところにも恩がたまっていく。それは強く実感しています。
ひょんなことからアフリカに行ったからこそ、衝撃が大きかった
ーアフリカとの出会いを教えてください。
大学時代に、バックパッカーをしていました。そのとき、ブラジルで青年海外協力隊の方と出会い、僕もやってみたいなと思ったんです。それが、人生で初めて強く抱いた目標でした。
世界一周を終えて帰国した後は、普通に就職活動をしていたんですが、「このまま日本に染まっていいのか?」という違和感が勝って、内々定をすべて断ってしまって……(笑)
辞退したその日の帰り道、電車の中で、青年海外協力隊のポスターが目に飛び込んできたんです。僕は後回しにしようとしていたんですよね。働いてお金を貯めてからじゃないと、海外支援はできないんじゃないかって。帰ってすぐにパソコンを開き、志望動機をぶわーっと書き出しました。
そのときは難民支援や、子どもたちと関わるようなボランティアに興味があったので、シリアなどを志望国にしていました。でも派遣されたのは、西アフリカのペナン共和国という、これまで知らなかったような国で。全然違うじゃんっていう(笑)
ただ、そこで忘れられない経験をしたんです。
ーそれは、どんな経験だったんですか?
出国前、僕は謎の使命感を持っていました。「貧しい思いをしている人たちに、もっと豊かな生活をさせてあげたい!」って。まだ行ったこともない国なのに、そんなことを考えていたんです。
でも、到着してみたら、その真逆でした。心が僕よりも圧倒的に豊かで、何も改善しなくて良いとさえ感じたんです。確かに、物の量やお金だけを比べたら、日本よりも貧しいのは事実です。でも何をもって「貧しい」と言うんだろう。彼らはそれを本当に求めているのかなって……。僕にとって、ものすごく衝撃的な価値観への出会いでした。ひょんなことからアフリカに行きましたが、だからこそ、そのインパクトは大きかったんです。
日本は物にもお金にも満たされているからこそ、逆に「まだ足りない」「もっとほしい」と感じてしまうこともあると思います。でも、僕がアフリカの方々から学んだように、「足るを知る」ような、もっと違う豊かさの尺度があっても良いと感じるんですよね。
当時は「日本からアフリカを元気にしたい」と思っていたはずなのに、今では「アフリカから日本を元気にしたい」と考えています。
誰かを救っていたら、自分も救われる
ーアフリカから学ぶこと、たくさんありそうです。
日本はスーパーに行けば、鶏肉や野菜が当たり前のように並んでいます。でも、鶏のさばき方や、野菜の育て方を知っている人は、きっと少ないですよね。「生きる」ということに関しては、アフリカの方は本当に強いです。
もちろん、全員がそういった知識を身につける必要はないと思います。ただ、しっかりと感謝をすることは大切ですよね。
今の日本の食料自給率は、約40%。残りの60%は、海外から支えてもらっているわけです。そういったことを知り、実感すると、生産者の方にはきちんとした対価を払わなければ、という気持ちになりますよね。「なんでも安く大量に」ではなく、必要な量を、適正な価格で買っていく。そういったことが、持続可能な社会をつくっていくんじゃないかなと思います。
ー最後に、今後の目標を教えてください。
僕は今、アフリカのニジェールという地域に、村をつくりたいと思っています。
このニジェールのマラディという州には、最近、お金の文化が流れ込んできました。ですが、ここにはお金と等価交換できるような資源も食料も、ほとんどありません。これまで自給自足で、自分たちが食べられるだけのものだけをつくってきたのに、お金に翻弄されてしまっているんですね。その結果、臓器売買が行われるなどの問題が起きています。そして、そこに違和感を持っている現地の人々だけで、新しく村をつくろうという動きが始まりました。
僕が一緒にオンラインイベントで登壇した方は、今、たったひとりでこの問題に立ち向かっています。これまで僕は、その方に相談ばかりしてきたのに、今回初めて「一緒にやってほしい」とお願いをしてくれたんですよ。絶対に、人生をかけてでもやり遂げたいと思っています。
僕がやっていることには、「与える」という文脈がありますが、結局は誰かを救っていたら、自分も救われるんです。困っている人がいたら、僕はすべてを差し出すし、反対に自分がヘルプを出したときには、自然と人が集まってきてくれるような生き方をしたい。僕は、今年でちょうど30歳です。これからも、一瞬一瞬ベストをつくして、頑張っていきます。
奥祐斉(おくゆうさい)
株式会社bona代表
https://bona.world/
となり主宰
https://www.facebook.com/tonaricommunity/
聞き手:小黒恵太朗(株式会社アイトーン)
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