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環境やテクノロジーは少しのきっかけで進化する -三浦望さん 山本英則さん

気になるお隣さん

GROVING BASEを利用する人を紹介する「気になるおとなりさん」。GROVING BASEをビジネスの拠点とする人、サテライトオフィスとして利用する人、イベントを開催する場所として利用する人、ふらりとコワーキングスペースやカフェに立ち寄る人。シェアオフィスを活用し多様なスタイルで働く人達を紹介します。

今回お話を伺うのは、全くの異業種でありながらスポーツに注目し共に海外勤務経験のある視野の広いお二人。

お一人目は、ドローンによる自動空撮のシステム開発を行い、スキーやヨットなどの広域スポーツ撮影を行う三浦望さん(株式会社RED DOT DRONE JAPAN/代表取締役/画像左)。これまでシステムエンジニアとして様々な事業に挑戦されてきた三浦さんは、秋田、ベルギー、東京、シンガポールと様々な土地での経験を経て2018年に京都に来られました。

そして、テニスのトレーニング機器の企画、導入支援を行う山本英則さん(株式会社価値創造社/代表取締役/画像右)。ご自身も学生時代陸上競技で活躍されたスポーツマンで、スポーツ用品メーカーでテニスの専門部署の営業職を経て、経営部門の室長ポジションとしてお仕事をされた後、京都で独立されました。山本さんもまた海外勤務経験があり、広い視野を持ってスポーツ業界を見ておられます。

スポーツや京都というテーマを中心にお話をお伺いし、それぞれの視点で語っていただきました。

スポーツをもっと気軽で身近なものに

-お二人はなぜスポーツに関わるビジネスを始めることになったのですか。

山本:僕は元々スポーツマンで、前職もスポーツメーカーに勤めていたんですよ。実はスポーツ以外の分野にも挑戦したいのですが、起業してからスポーツ程よく知っている業界はないと改めて思い知り、自身の強みを活かす形で今の仕事に繋がっています。

三浦:僕は元来映像屋なので、注目するのはスポーツ撮影によって得られる激しい戦いや興奮する映像というコンテンツ。ドローンをどう使っていくかと考えた時に、スポーツにはまだまだ潜在的なビジネスチャンスがあると感じたのがきっかけですね。

-一言でスポーツと言っても「する」側と「観る」側のお二人という印象ですが、スポーツをビジネスという視点でみたときにはどのような事を感じていますか。

山本:エンターテインメントとしての市場の可能性はまだまだあると思います。実際に「観るスポーツ」と「するスポーツ」という言い方をするのですが、ラグビーはワールドカップによって「するスポーツ」から「観るスポーツ」に一変しましたよね。これには映像の進化の影響も大きくて、ビジネスという視点でみた時これからますます観るスポーツが重要になってくるんじゃないでしょうか。

三浦:日本ではスポーツで動くお金がまだとても少なくて、スポーツが活発な他国と比べるとその差は歴然とさせられます。感じている要因の一つとして、日本には今も「道」の考え方が残っていることです。剣道や柔道など、体を動かすだけでなく精神的な面も重要視していて、スポーツでお金を稼いだり、勝つことをアピールするべきでないという考え方が少なからずあるのではないかと。それはそれで良い事ですが、海外に目を向けるともっと単純に楽しむためにスポーツがあったり、ビジネスとしてスポーツを活用するという色が強く出ています。

山本:おっしゃるように日本と海外ではスポーツの捉え方に結構違いがありますよね。「sport」の語源は「disport」から来てるんですよ。“除く”という意味の“dis”と、“港”という意味の“port”です。つまり、船乗りが「港で働かない時の過ごし方」として、仕事でも家族でもない第3の過ごし方として運動を楽しんでいたことからスポーツという言葉が生まれてるんです。その事からも海外ではスポーツをよりフランクに捉えている事が伺えますね。

東京オリンピックをきっかけに新しいアイデアがカタチになっている

-東京オリンピックの開催が決まってから何か変化を感じますか。

三浦:東京オリンピックの開催が決まってからこの数年で、スポーツとテクノロジーの連携が進んでいるのは事実です。スポーツそのものだけでなくスポーツ周辺も活性化しているんですよ。例えばスタジアムでは、エントランスでのスムースな入場のためのシステムだったり、ゲレンデでは各リフト乗り場の混雑状況がスマートフォンで分かったり。また、そのスポーツに詳しくない人やあまり興味がない人も訪れてくれるような施策をテクノロジーと掛け合わせることによって実現しようとしている動きもあったりします。これらは、実は今までも技術的には実現可能だったものですが、オリンピックを機に今まで以上にスポーツに視点が向き、どんどん新しいアイデアがカタチになっていると思われます。

山本:スポーツのスポンサーと言えば、これまで用品メーカーや飲料メーカーが主だったのが、最近はITなどの分野の企業が参入してマーケットを作ろうとしています。支援の形が、お金というよりも技術の提供という事も増えているんじゃないですか。オリンピックがきっかけとなってスポンサーの在り方に限らずスポーツの見方が変わってきているのは感じます。アスリートのコーチからのパワハラ問題が浮き彫りになったり、教育としての「体育」の在り方など、古い考え方がどんどん塗り替えられていくきっかけになっていますね。

三浦:スポーツに限らず色々な業界で古い考え方と新しい考え方のせめぎあいが起きていますよね。それが良い方向にいくか悪い方向にいくかは分かりませんが、何かが変わっていくなという感覚はあります。

Kyoto, Japan city skyline at dusk.

古いものと新しいものが混ざり合う都市“京都”

-ビジネスの拠点として京都を選ばれた理由はありますか。

山本:京都には古いものが残っていて、そんな魅力に惹かれて新しいことを持ち込む人が多く、古いものと新しいもののハイブリットな良さがありますよね。僕の場合は元々京都出身ということも理由ですが、そんな魅力があるからこそビジネスの場として京都を選んでいるところはあります。

三浦:僕は京都に来る前は海外にいたので、日本で起業するならどこが良いかなと考え戦略的に京都を選びました。まず地理的に西にも東にも移動しやすいのが良いですよね。それから、山本さんがおっしゃった温故知新にも通ずることかと思いますが、京都はアートとビジネスの感覚が上手くミックスされているのが魅力です。国外にアピールするときにも京都の企業というブランドはとても強いですし、そんな京都に魅力を感じて世界中から優秀な人が集まってきていることも京都を選んだ要因です。これから京都が新しいイノベーションの形を作るエリアになっていく予感はありますよね。

-反対に京都でビジネスを行うデメリットは感じていますか。

三浦:メリットの裏返しになりますが、古い文化が残っている事によってオールドエコノミーを大事にしようという動きが強くなるのは当然のことで、その分僕たち新興ビジネスが大きなサポートを受けにくいというのはデメリットと感じます。例えば、京都は郊外を除き、中心部は日本で一番ドローンが飛ばしにくいエリアと言われています。そんな理由から「ドローン関連でなぜ京都?」と不思議に思われます。もちろん、そのデメリット以上の魅力を感じているので京都にいるわけですが。京都ならではの素晴らしいコンテンツに囲まれているのにそれを思う存分撮れないのはもどかしいところですが、適切に関係部署と連携して安全と信頼を確保しながら、もっと京都の魅力を世界に発信していきたいと考えています。

-お二人はそんな京都で、シェアオフィスを拠点に選んでいるわけですが、シェアオフィスの魅力や期待することを教えて下さい。

山本:自分の価値観や生活の範囲では知り得ない人と同じ場所で働けるのは良いですよね。最先端を走っておられる三浦さんの近くで仕事が出来るのはすごく刺激を受けていますよ。三浦さんはスキーやヨットなど広域スポーツを中心に撮影されていますが、僕が得意分野としている場所が限定された競技にも興味を持ってもらえないかなと期待しているんですよ笑

三浦:今はドローンに軸足を置き、スポーツとドローンに専念することで自分たちのアイデンティティを明確にしていますが、だからと言ってドローンだけに拘ってはいません。様々な技術を投入して刺激的で新鮮な映像を届けたいと思っています。シェアオフィスでは、全くの異業種の方との思いもよらない化学反応に期待しています。常に社外の人と近い距離にいられるので、必要なときに力を貸したり借りたり出来るのは魅力ですね。

-本日はありがとうございました。

三浦望(みうらのぞむ)
株式会社RED DOT DRONE Japan 代表取締役
秋田、ベルギー、東京、シンガポール、京都を渡り歩く現役のソフトウェアエンジニア。ドローンとスポーツに軸足を置き、映像とデータと音楽を駆使して、これまでにないスポーツ観戦体験を提供する。

山本英則(やまもとひでのり)
株式会社価値創造社 代表取締役
学生時、陸上競技にて当時の京都高校記録や西日本学生記録を樹立。アパレル企業にて2年間の英国勤務等の後、東証2部上場のスポーツ商社にて営業職、経営企画、広報・IR部門の部門長などを歴任。2016年㈱価値創造社を起業。

聞き手:篠田拓也(株式会社アイトーン)

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